【イベントレポート】ホンマなん?!vol.4 ミドルと一緒に作る園内の仕組みと仕かけ〜現役ミドルリーダーの悩みを聞いてみよう〜

2024年11月20日(水)、VISH株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:田淵 浩之)はリンクエイジ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役:藤田 俊)と合同で、幼児教育・保育業界のリーダー向けオンラインイベントを開催しました。

このイベントは、参加者がただ情報を受け取るだけでなく、「自分はどうするか」を考え、自らの現場や実践に応用できる場として企画されています。全国から集まった園長やミドルリーダーや保育者が、共通する課題について議論し合うことで、幼保業界の未来を一緒に創り上げていくことを目指しています。

■Vol.4のイベントの流れ

特別ゲストである向平雄馬先生(北海道・東聖こばと幼稚園)による話題提供を皮切りに、阿部能光先生、亀山秀郎先生、北島孝通先生がそれぞれの視点から発表を行い、参加者同士のディスカッションを通じて多くの示唆が得られました。

<執筆・編集:VISH株式会社 西尾 真吾>

■登壇者紹介

亀山 秀郎(学校法人七松学園 認定こども園 七松幼稚園 理事長・園長)
阿部 能光(学校法人鈴蘭台学園 認定こども園いぶき幼稚園 園長)
北島 孝通(学校法人庄内神社学園 幼保連携認定こども園 庄内こどもの杜幼稚園 理事長・園長)
藤田  俊(リンクエイジ株式会社 代表取締役)
西尾 真吾(VISH株式会社 執行役員)

■特別ゲスト

向平 雄馬(学校法人こばと学園 東聖こばと幼稚園 主幹)
栫井 裕矢(学校法人グリーン学園 認定こども園 安井幼稚園 事務)

◆話題提供:現状の課題と悩み、目指す姿(東聖こばと幼稚園 向平 雄馬 先生)

向平先生は、ミドルリーダーとして日々取り組む中で直面している課題を率直に共有されました。その中でも特に注目されたのは次のポイントです。

  1. ICT導入と現場のギャップ
    Canva(キャンバ)Trello(トレロ)園支援システムなどのICTツールを活用して業務効率化を進めているものの、それを現場に根付かせる難しさが語られました。「園長がいいと言っているから、みんなもそれに従う」という状況があり、それが現場における「右にならえバーガー」を象徴していると述べられました。つまり、理念や未来像が曖昧なままでは、現場の職員が自ら納得して進める形にはなりにくいという課題を感じているとのことです。
  2. 保育の質を深める環境づくり
    向平先生は、現場の先生たちが互いに語り合える良好な関係性を築いていることを自園の強みとしつつ、その土台となる理念や未来像が曖昧で、「語り合った後にどう形作って進んでいくかが決まっていない」と感じていると述べられました。ICT導入による業務効率化で浮いた時間を、保育の質を深める活動に活用したいという目標がある一方で、具体的な道筋が見えないことに課題感を持たれています。
  3. 人材育成と役割分担
    若手職員の成長を促しつつ、現場全体の調和を図る難しさを指摘されました。「自分の強い想いが、職員へのプレッシャーになってしまっているのではないか」という葛藤が印象的でした。向平先生は、自園の良好な関係性をさらに活かし、職員が自発的に主体性を発揮できる環境を目指して取り組んでいると述べられました。

 
◆発表①:教育者の多面的役割と成長支援(認定こども園いぶき幼稚園 阿部 能光 先生)

向平先生の話題提供を受け、阿部先生は南山大学名誉教授の津村俊充さんの「教育者のかたち」という概念を基に、ミドルリーダーの役割について次のように提案しました。

  1. ミドルリーダーの多様な役割
    教育者が時と場合に応じて「インストラクター」「ファシリテーター」「教授者」「コンサルタント」の役割を切り替えるように、ミドルリーダーも状況に応じた柔軟な対応が必要だと述べられました。特に、「教授者」として初心者に基本を教え、「ファシリテーター」として若手の意見を引き出しながら自立を促すことの重要性を具体例とともに解説されました。
  2. トップリーダー層とミドルリーダー層の役割分担
    トップリーダーは、園全体の方向性や長期的なビジョンを示し、組織の基盤を固める役割を担うべきです。一方で、ミドルリーダー層は、そのビジョンを現場に浸透させ、具体的な行動に落とし込む役割を果たします。この連携がうまく機能することで、現場の混乱を防ぎ、職員一人ひとりが自発的に動きやすい環境を作ることができると述べられました。
  3. コマ付き自転車の例えによる成長支援とICT導入の工夫
    阿部先生は、「子どもを育てるのも、若手の先生を育てるのも、ICTの導入についても基本的なアプローチは同じ」だと語られました。コマ付き自転車の例えを用いて、次のように説明されました。
    初めて自転車に乗る子どもには、コマが付いていることで安心感を得られます。同じように、ICTの導入や若手の育成でも、初めはリーダーが手厚くサポートし、不安を取り除くことが大切です。しかし、ずっとサポートを続けるのではなく、成長に応じて少しずつ手を離し、最終的には自立できるよう促すことが重要だと述べられました。
    その過程で、「手を離しても目を離さない」というリーダーの姿勢が求められます。特に、コマを外して一人で走り出した瞬間が最も転びやすくて危ないため、細心の注意を払うことが必要です。ICT導入においては、初めに職員に成功体験を積んでもらい、現場に根付くまで見守ることが成功の鍵となると強調されました。

阿部先生の発表では、「個々の職員の声を丁寧に聞くことが、結果的に園全体の成長につながる」というメッセージが強調されました。また、役割分担を明確にすることで、トップとミドルの連携が強化される重要性が示されました。

 

◆発表②:園の文化を根付かせるハンバーガーレシピ(認定こども園 七松幼稚園 亀山 秀郎 先生)

亀山先生は、向平先生が話題提供で挙げた課題を「文化を根付かせる」という視点で深掘りし、園全体の文化づくりを「ハンバーガー」に例えながら、その具体的なアプローチを提案されました。

また、職員が抵抗を感じる場合もあるため、園内の研修や外部講師の支援を活用し、職員が「組織の姿」を自覚できるように働きかけてきたと説明しました。こうした「話し合える土壌づくり」はどの園でも難しい課題であり、業務負担を軽減して時間を確保するなどの工夫が不可欠です。さらに、話し合いが深まるためには、理念や目標をしっかりと見直し、それに照らし合わせた行動を取る姿勢が重要であると述べました。

◎向平先生の課題に対する具体的なアプローチ
  • ICT化の方向性の明確化
    ICT導入は「目的」と「現場の理解」を一致させることが不可欠と指摘。成功事例を現場職員と共有することで、導入意図をより具体的に伝える必要性を強調されました。
    ICT導入による業務効率化を目的にするだけではなく、それが保育の質向上にどう繋がるかを明確にする必要性が述べられました。特に、保育内容の記録や共有を通じて、職員がICTの効果を実感し、自身の保育に活かせる仕組みづくりが重要だと提案されました。
  • ポリシーブック作成の工夫
    園全体の方向性を明確にするための「ポリシーブック」について、亀山先生はワークショップ形式で職員全員が参加し、共に作り上げることを提案されました。特に、「自園の子どもたちのために何ができるか」を職員全員で議論し、理念を共有するプロセスが重要であると述べられました。また、このポリシーブックが完成した後も、その内容を保護者とも共有し、園全体で“子どもを中心に考える”姿勢を確立することがポイントであると強調されました。
◎ハンバーガーレシピによる文化づくり

亀山先生は園文化を「ハンバーガー」に例え、文化づくりのポイントを以下のように示されました。

レシピのヒント

  1. バンズ(ビジョンとミッション)
    園のビジョンやミッションは、文化を支える「バンズ」に例えられました。園の方向性を明確にし、それを職員全員で共有することで、他の取り組みが安定して機能する基盤が生まれます。亀山先生は、七松幼稚園で職員と共に策定したミッションステートメントが、園全体の指針となっている具体例を紹介しました。
  2. 国内産(園内産)の具材
    職員それぞれが現場で培った実践やアイデアを「具材」に見立て、それを活かすことの大切さを強調しました。園内で生まれたものを共有し発展させることで、職員が主体的に園の文化を築けるようになります。

宣伝方法

  1. シンボルマークの活用
    園の理念や文化を象徴するシンボルマークを作成し、それを職員室や保護者への配布物、名刺などに活用することで、文化の共有を促進。亀山先生は、七松幼稚園で保護者が作成したシンボルマークを例に挙げ、その意義を解説されました。
  2. SNSで具材の魅力を発信
    ハッシュタグや写真を用いたSNSでの情報発信を通じて、園の取り組みを広く共有する方法が示されました。これにより、職員全体で具材(実践やアイデア)の価値を再確認し、保護者や地域社会に園の魅力を伝える効果が期待できます。
 
◆発表③:管理職と現場の距離感を縮める工夫(庄内こどもの杜幼稚園 北島 孝通 先生)

北島先生は、管理職と現場職員の間の距離感を縮め、より良い組織文化を形成するための具体的な方法を提案されました。

①業務の見える化
管理職(教頭や主任)の業務内容を ToDoリスト として整理し、全職員に共有することで業務の透明性を高める取り組みが紹介されました。これにより、業務の属人化を防ぎ、新任の管理職でもスムーズに業務を引き継げるようにする具体例が示されました。北島先生は、「教頭や主任が『何をしているのかわからない』という現場の疑問を防ぐことで、役割の明確化が現場の安心感を高めるポイントになる」と強調されました。

②心理的安全性の確保
職員が意見を出しやすい環境をつくるためには、管理職自身が 「自己開示」 を行い、職員との信頼関係を築くことが重要であると述べられました。心理的安全性を確保するために以下の具体策が挙げられました。

  • 距離感の調整
    管理職が現場職員に積極的に歩み寄ることの重要性が指摘されました。「現場職員から意見が出るのを待つのではなく、管理職が自ら現場の声を聞きに行くべきだ」という「現場100回」の精神が共有されました。
  • “関係性が良い”とは何か?
    雑談が活発であっても、会議で意見が出ない場合、それは「関係性が良い」とは言えないと指摘されました。本当に良い関係性とは、職員が会議や話し合いの場で安心して意見を述べられる環境であると述べられました。

③話し合いの質を向上させる工夫

北島先生は、会議を単なる情報共有の場に留めず、参加者が価値を感じられる場にする工夫が必要であると述べられました。以下のポイントが提案されました。

  1. 参加者にとっての「得られるもの」を明確に
    「話し合う目的や内容」が合意形成されていることが重要であると強調されました。参加者が「知識や技能を得られた」「自分の提案が通りそうだ」と感じることで、会議の質が向上します。
  2. リーダーの意見は出すべき、出し方には工夫が必要
    リーダーは意見を出すべきですが、その際には「自分のモノサシ」(理念や価値観)を共有する必要があります。北島先生は、「相手の理解度に合わせて話を砕き、少量ずつ伝える工夫が必要だ」と述べ、離乳食に例えて説明されました。
 
◆総括(リンクエイジ株式会社 藤田 俊 氏)

藤田氏は今回のイベントを通じて、「価値観のすり合わせ」が組織の成長と調和に欠かせないポイントであると述べられました。特に、北島先生の「上の業務は下からは見えない」や「歩み寄るのは上から下が原則」という指摘を受け、役割に応じた視点の重要性を強調しました。

また、事案ごとの決定権や発言権を持つ人をどう話し合いに巻き込むかが組織の課題解決に直結すると述べ、向平先生が挙げた「目的の確認」の重要性についても、「話し合いの場で『大事なこと』や『目的』を確認しながら進めることが必要」と指摘されました。

亀山先生の「ハンバーガー」の比喩を引き合いに、園で大切にしてきたポリシー(バンズ)をしっかり固め、目指すべき目的地を見据えた議論を進める必要性も確認されました。

最後に藤田氏は、共有された解決策をそのまま適用するのではなく、各園の現場や関係性に合わせて工夫する必要性を強調。「得たヒントを活かし、子どもたちにより良い保育を還元してほしい」と述べ、参加者の実践を後押ししました。

 
◆参加者の声
◎イベントへの満足度

今回のイベントには多くの参加者から高い満足度の評価が寄せられました。その理由として次の意見が挙げられました。

「同じ課題を抱える園の事例から、自園の方向性が正しいと確信できた」
「初参加だったが、これほど濃密なセミナーならもっと早く参加したかった」
「具体的な解決策を得られた」

◎次回開催への期待

参加者から次回に期待するテーマとして、以下の声が寄せられました。

「保育観や保育の悩みを深く議論する職員会議の進め方」
「ICT化や業務効率化の成功事例のさらなる共有」
「職員が共通の目標やビジョンを持つための方法」

 

・・・

 

◆執筆者・西尾のまとめ

2024年5月に藤田氏、亀山先生、阿部先生とともに始めた「ホンマなん?!コミュニティ」は、幼児教育・保育業界のリーダーシップや組織運営の課題を共有し、全国の園長やミドルリーダーの皆さんとともに深める場として成長してきました。今回で4回目となったこのコミュニティでは、現役ミドルリーダーの課題をテーマに、多くの気づきと実践のヒントを共有することができました。

これまで、第12回では「理念の重要性」と「トップリーダーの役割」、第3・4回では「現場の課題」をテーマに、参加者の声を中心に据えて議論を展開。今回も向平先生の悩みを起点に、亀山先生、阿部先生、北島先生がそれぞれの視点から具体的な示唆を与えてくださいました。

私自身、ICTシステムを提供する企業のリーダーという立場で参加していますが、毎回「現場の課題はICTだけでは解決できない」と痛感します。同時に、「ICTが保育の質向上にどう貢献できるのか」を考える大切な機会となっています。理念を基盤とし、トップ、ミドル、現場が連携して取り組む姿勢が、持続可能な組織運営に必要であると改めて感じました。

アンケートでも「自分の園と同じ課題を共有できた」「管理職の業務を見える化する必要性を実感した」との声が寄せられ、議論の価値を再確認しています。次回は新たなゲストを迎え、さらに実践的な議論を進める予定です。また、Facebookなどを活用した情報交換の場も検討中ですので、ぜひご期待ください。

全国のリーダーの皆様、次回もこのコミュニティでお会いしましょう!ともに悩み、考え、現場での実践につなげていける場を一緒に作り上げていきましょう!

 

次回イベントは今年度内に開催予定です!
詳細は追ってお知らせいたしますので、ぜひお楽しみに!

 

■主催会社/VISH株式会社について
VISH株式会社は「すべての人にゆとりと笑顔を」を使命に、保育士の負担軽減と保護者が安心できる環境づくりを目指して活動しています。現場の声に耳を傾けながら、ICTを通じて保育の未来を支えています。2010年12月にリリースされた「園支援システム+バスキャッチ」は、幼稚園・保育園・認定こども園向けのICTシステムで、2024年12月1日時点で、全国2,600以上の施設で利用されています(解約・閉園除く)。欠席連絡、保育料計算、連絡帳管理など幅広い業務を効率化し、保育士、保護者、子どもたちが安心して過ごせる環境をサポートします。

VISH株式会社 https://www.vish.co.jp/
「園支援システム+バスキャッチ」 https://www.buscatch.com/kindergarten/

 

■主催会社/リンクエイジ株式会社について
リンクエイジ株式会社は、インターネット写真サービス「memoridge」を運営しています。教育機関を中心にスポーツ団体や、さまざまなイベントの写真や動画撮影、インターネット上での販売を行うサービスです。現在は延べ全国1,700団体以上の導入実績があります。2021年10月には新サービス「memoridge drive(メモリッジドライブ)」を開始いたしました。「全ての愛を力に変える」をミッションに写真1枚から、愛情を増幅させ、世の中に変わらない愛の循環を生んでいきたい。そして、その愛はきっと明日を生きる力に変わる。そんな愛ある会社を目指しております。

リンクエイジ株式会社 https://www.lage.co.jp/
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