【幼保事業者向けイベントレポート】働き方改革や業務効率化で定着率アップってホンマなん?!vol.1

2024年5月14日(火)、VISH株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:田淵 浩之)はリンクエイジ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役:藤田 俊)と合同で、保育施設向けオンラインイベント「働き方改革や業務効率化で定着率アップってホンマなん?!」を開催しました。

昨今、少子化が進み保育施設の競争が熾烈になる一方、保育者の人財不足が深刻になっています。保育の未来をよくしていくためにも、園長やミドルリーダーの方々と共に組織づくりについて考えたい。そうした思いを持った幼児教育・保育現場の園長・ミドルリーダー、企業のトップリーダー・ミドルリーダーが集結し、人財不足時代の採用・人材育成・組織づくりを考えるオンラインイベントを開催しました。

参加者が答えを授かるのではなく「自分はどうするか?」を考える───そんなコンセプトをもとに討議が行われた本イベントの内容をダイジェスト形式でお送りします。

 

 

■登壇者紹介

亀山 秀郎(学校法人七松学園 認定こども園 七松幼稚園 理事長・園長)
阿部 能光(学校法人鈴蘭台学園 認定こども園いぶき幼稚園 園長)
藤田  俊(リンクエイジ株式会社 代表取締役)
西尾 真吾(VISH株式会社 執行役員)

 

◆「働き続けたい」と思える職場はどう作るか

登壇者の一人、亀山園長は認定こども園七松幼稚園の理事長・園長を務める傍ら、日本幼少児健康教育学会監事、尼崎市幼保小連携推進委員会委員なども兼任し、今なお幼児教育の実践を研究されています。

多数の幼児教育・保育の現場の研究、指導を行ってきた経験をもとに、現場の構造的な問題や定着促進にまつわる事例をご紹介いただきました。

◎職員が退職を決意するときの心情ってどんなもの?

亀山園長 そもそも職員が退職に至るまでにどのような心境変化があるか、これまでの経験をもとにすると、大きく2段階の流れがあると考えています。

【1】辞める理由ができる
職場の雰囲気が悪い、処遇が上がらない、または働き方改革が進まないといった出来事をきっかけに、職員が「辞めたい」と感じるようになります。

【2】働き続ける理由がなくなる
1段階目で挙げたような辞めたい理由を内心に抱えつつ働いている職員が、自分にとっての「働き続ける理由」がなくなったとき、退職へ踏み出すこととなります。中でも可能性が高い理由がこの2つです。

・自分が成長できる組織、キャリアパスが明確な組織ではないと気づいた
・園という組織の中で自分が承認されている実感がない、居場所がない

これらの点に気づいたとき、「これ以上続ける理由がなくなった」と退職を決断する職員が多いのではないかと感じています。この変化は外から見ていると気が付きにくいので、注意が必要ですね。

◎働き続けたい職場って?

亀山園長 では、働き続けたいと思える職場を作るにはどうすればよいか?そのためには、理念を基にしたソフト面・ハード面それぞれの環境改善が必要になると考えています。

▼ソフト面を改善する取り組み
職場のタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションを改善するとともに、職員のエンゲージメントを高めることが大切です。子どもの成長は数字化できないから、保育士って実は達成感を味わいづらい仕事なのではないかと思っています。だから、子どもの育ちを共有してしっかり承認することが、職員のやりがいや自信につながるはずです。

日々職員に園長から「ありがとう」と伝える、子どもの成長を喜び合う……園長という立場でこうした点に注意して取り組んでいますが、一朝一夕には変わりません。まだまだ課題は山積みですね。

▼ハード面を改善する取り組み
ハード面では何をおいても、トップの人間が柔軟性を持つことが大切です。私も普段から気を付けていて、サイボウズ・KOKUYOといった先進的な企業の取り組みを学んでいます。

固定観念を取り払うという文脈では、伝統や保護者のためでなく、子どもファーストな視線で園の行事を見直すことも大切。当園では「運動会」「発表会」「作品展」などの行事は「●●まつり」に行事名を変更し、子どものための行事へと捉え直しを図りました。

制度面では、時短勤務や育児サポート(職務変更、企業主導型保育事業を利用)など、結婚してもキャリアを継続していけるように家庭と両立できる支援を取り入れています。他にも労務環境改善のために、「休憩を取れる園にしました!」と保護者に一斉メールで周知するなども行いました。

このように、ソフト・ハード両面で改善を進めて行きましょう。重要なのは、こうした取り組みを園の理念ベースで構築していくということです。

 

◆処遇改善・働き方改革だけで定着率は上がるのか?

続いて、認定こども園いぶき幼稚園園長 阿部先生に、幼児教育・保育現場における定着促進対策について解説いただきました。

阿部園長 処遇の改善や働き方改革だけで定着率は上がるのか?まさに今回のイベントの主題でありますが、結論としてはNOだと思っています。

◎高給与・ホワイトな労働環境だけでは定着率は上がらない!

・周囲の園より高い給与を出しているのに定着率が低い
・ホワイトな環境を整えたのに相変わらず2~3年で職員が入れ替わる……

こうした園は私の知る限り昔から存在していたので、待遇のよさや労務環境のよさだったりは定着率改善の根本的な対策にはならないと確信していました。

定着の本質は人間関係なんです。

◎定着の鍵は「タテ・ヨコ・ナナメ」のつながり

阿部園長 若手の離職率が高い園はヨコのつながりは強くとも、タテ・ナナメの年代を超えた関係性が弱い傾向にある……多くの園を見て回る中でその点に気づきました。

若手と中堅・ベテラン職員のコミュニケーションが改善することで、若手だけでは解決できなかった悩みを吸い上げて対処したり、職場全体の風通しのよさにつながったりするもの。

タテ・ヨコ・ナナメの関係性の強化が、若手の定着には必須と言えます。

◎「心理的安全性の確保」「メンター制度」の導入でうまくいく?

阿部園長 近年では心理的安全性の重要性が広まり、メンター制度や寄り添い型の指導を通じて、風通しのよさを意識した職場づくりを図る園が増えてきています。

しかし「表面上の雰囲気はよくなったけど、職員が話しているのは旅行やアイドルの話ばかり。子どもや仕事についての対話が生まれる印象がない…」など、改善の実感がわかないという声を聞くことも多い。

なぜかというと、表面上仲良くなっているかに見えて、職員の心のうちではぶつかり合いを恐れて、意見が割れそうな対話=子どもや仕事の話題を避けているという構図があるんです。

よい保育をするために人間関係性を改善したはずが、いかに仲良くいられるかが重要になっている……すなわち、手段と目的が逆転しているんですね。

◎組織の成熟度にも成長段階がある – タックマン・モデルの参照

阿部園長 では、なぜこうした取り組みがうまくいかないのか。
そもそも、取り入れている制度と組織の成長段階がマッチしていない場合があります。

そこで、チームビルディングの考え方として用いられるタックマン・モデルを参考に、自園の組織が今どの段階なのかを客観的に把握するのがよいでしょう。

※タックマン・モデルについては、是非インターネット等で調べてみてください。

 

◆組織をまとめるのに「理念の浸透」がなぜ重要なの?

保育施設における定着課題について、職員のエンゲージメント・組織の成長段階と大きく2つの視点から語ってきましたが、やがて組織づくりの根幹となる「理念」へと議論が移っていきます。

◎保育理念が現場にとって判断の拠り所になる

藤田氏 ここまで組織づくりの課題をいくつか事例に出してきましたが、どれも他人という異質なもの同士が集まればどんな組織であっても起こりうる問題だったと感じます。

組織づくりは難しいという前提に立ったとき、何か一つ職員同士で合意が得られている保育目標があったら、ボトムアップ式でチームメイクの礎になっていくと思うんですよね。

では現場がしっかりしていればトップは何もする必要がないのかと言われるとそうではない。亀山先生の話にあったような保育理念や保育指針をしっかり明示することで、現場に立つ保育者が悩んだときに判断の拠り所としての役割を発揮すると思います。

阿部園長 保育には、理想を追求していく幼児教育と、絶対崩してはいけない福祉・養護の面のセーフティーネットが一体になっています。保育を行うには「子どもの安全や健康を守るために最低限これは守ろう」という共通ルール、そして「子どもたちの可能性をこんな方向に伸ばしていきたいよね」と指針を示した目標が必要だと思っています。

その2つがトップから明示されていないと、ミドルリーダーや現場の職員が混乱することになってしまうんですよね。

……皆さん、実際トップマネジメントはどのくらいできていますか?

西尾 当社の話で言うと、やはり未だにできていないですね。どうしても過去の成功体験に沿ったマネジメントをやりたくなってしまう時もあって……。今一度、組織のあり方を見直す意味で、社内で理念や行動指針の見直しをしています。

◎理念を浸透させるには?

西尾 一つ気になるのですが、理念ってどんな場面でも当てはめて考えられるように抽象度が高めてあるじゃないですか。職員一人ひとりが理念を十分に理解していないと実際の行動に落とし込むのは難しいと思うのですが、理念の浸透にはどう取り組んでいますか。

亀山園長 あくまで当園の場合ですが、グループワークを通じて園の理念や行動指針をベースにどんな保育をしていきたいか話し合っています。あとは終礼での理念の唱和、行動指針の掲示など地道な取り組みも行っていますね。

そうした繰り返しの結果、少しずつ理解が深まり、近年では職員みずからが理念をベースに活動を考案してくれるに至っています。

藤田氏 結局、抽象的な理念を具体的な保育の場面に落とし込む経験を反復するうちに、職員の中で理念と実践が結びついていくんですね。そこにはOJTでの指導も必要だと感じます。ここまで話してきて気になったのですが、実際、理念の浸透が職員の定着につながる実感はありますか?

亀山園長 正直なところ、まだ道半ばではありますが少しずつ定着につながっていくような予感はありますね。

阿部園長 子どもの成長が数字など目に見える形では現れないからこそ、保育士という仕事は職員自身の成長実感が得づらいし、目指すべき保育者像が見えにくいと思うんです。さらに評価者にとっても、何を基準に評価するべきかが曖昧ですよね。

そこで、保育理念・保育目標こそが保育者にとっての成長のめやす・評価の軸になっていくと思うんです。そうした波及効果があるからこそ、定着・組織づくりにおいて、トップが理念を発信することの重要性は忘れたくないですね。

 

・・・

 

人が財産である保育施設において、定着・組織づくりは永遠の課題と言えます。明確な到達地点がないからこそ、自園の組織状態をよく見極めて取り組みを続けていくことが重要なのかもしれません。

 

◆次回オンラインイベントは7月3日(水)開催予定!

本コミュニティ「働き方改革や業務効率化で定着率アップってホンマなん?!」は、2024年度内に全3・4回の開催を予定しています。

参加者の皆様からは「続きを聞きたい」「早く次回開催に参加したい」という声を多くいただきました。

次回の開催は2024年7月3日予定です。詳細は改めてお知らせいたします。

 

■主催会社/VISH株式会社について
VISH株式会社は、日本の真ん中・愛知県名古屋市からインターネットを活用し、皆さまの想い(Vision)を共有(Share)するクラウドサービスの開発・提供を行っています。2010年にリリースした「園支援システム+バスキャッチ」は、園バス運行情報、園児管理を中心に、保護者の連絡手段のデジタル化、教職員の働き方改革に寄与する低価格なクラウドサービスで、2024年4月1日時点で、全国約2,500の施設で利用されています(解約・閉園除く)。

VISH株式会社 https://www.vish.co.jp/
「園支援システム+バスキャッチ」 https://www.buscatch.com/solution/kindergarten/

 

■主催会社/リンクエイジ株式会社について
リンクエイジ株式会社は、インターネット写真サービス「memoridge」を運営しています。教育機関を中心にスポーツ団体や、さまざまなイベントの写真や動画撮影、インターネット上での販売を行うサービスです。現在は延べ全国1,700団体以上の導入実績があります。2021年10月には新サービス「memoridge drive(メモリッジドライブ)」を開始いたしました。「全ての愛を力に変える」をミッションに写真1枚から、愛情を増幅させ、世の中に変わらない愛の循環を生んでいきたい。そして、その愛はきっと明日を生きる力に変わる。そんな愛ある会社を目指しております。

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