【イベントレポート】働き方改革や業務効率化で定着率アップってホンマなん?!vol.3〜ミドルリーダーが育つ、活躍する園づくりとは?〜
2024年10月23日(水)、VISH株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:田淵 浩之)はリンクエイジ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役:藤田 俊)と合同で、幼児教育・保育業界のリーダー向けオンラインイベント「働き方改革や業務効率化で定着率アップってホンマなん?!vol.3〜ミドルリーダーが育つ、活躍する園づくりとは?〜」を開催しました。
このイベントは、参加者がただ情報を受け取るだけでなく、「自分はどうするか」を考え、自らの現場や実践に応用できる場として企画されています。全国から集まった園長やミドルリーダーや保育者が、共通する課題について議論し合うことで、幼保業界の未来を一緒に創り上げていくことを目指しています。
■Vol.3のイベントの流れ
第3回目となる今回は、「ミドルリーダーが組織の理念をどのように現場で実践し、職員とどのように連携していくか」がテーマとして取り上げられました。参加者は各園での課題を共有し、特別ゲストとして招かれた安井幼稚園の栫井裕矢先生が抱える実際の悩みを通じて、具体的な解決策について議論を深めました。
<執筆・編集:VISH株式会社 西尾 真吾>
■登壇者紹介
亀山 秀郎(学校法人七松学園 認定こども園 七松幼稚園 理事長・園長)
阿部 能光(学校法人鈴蘭台学園 認定こども園いぶき幼稚園 園長)
北島 孝通(学校法人庄内神社学園 幼保連携認定こども園 庄内こどもの杜幼稚園 理事長・園長)
藤田 俊(リンクエイジ株式会社 代表取締役)
西尾 真吾(VISH株式会社 執行役員)
■特別ゲスト
栫井 裕矢(学校法人グリーン学園 認定こども園 安井幼稚園 事務)
向平 雄馬(学校法人こばと学園 東聖こばと幼稚園 主幹)
◆発表①:保育者主導から子ども主体への転換期におけるミドルリーダーの挑戦とジレンマ(認定こども園いぶき幼稚園 阿部 能光 先生)
昔ながらの保育者主導型の保育を続ける幼稚園・保育園では、トップダウンの組織体制が根付いています。多くの私立幼稚園や保育園では、理事長や園長といった創業者一族がトップリーダーを務め、たとえ20~30年のキャリアや主任等の肩書がある職員でも決済権は何も持っておらず、平社員扱いの立場に留まるケースが一般的です。このような環境では、トップの決定事項や指示をそのまま忠実に遂行する職員が理想とされ、さらには、保育者の指示へ素直に従う子どもが理想とされていました。ミドルリーダーに期待される役割も、トップの指示が保育現場で確実に遂行されるよう「管理・監督・指導」を徹底することが求められてきました。
しかし近年は「子ども主体の保育」への転換が社会全体で求められ、保育現場にいる子どもと保育者の意見を尊重し、柔軟な対応を重視する保育のあり方が注目されています。「サーバントリーダーシップ」の考え方が示すように、現場の保育者の主体性を引き出すことが、より創造的な「子ども主体の保育」を実現する支えとなります。そのためには、現場とトップリーダーを「つなぐ役割」としてのミドルリーダーの存在が欠かせません。阿部先生は、この転換期においてミドルリーダーが直面する課題や組織の壁について次のように指摘しています。
◎現場の学びが生かされないジレンマとミドルリーダーの葛藤
阿部先生によると、幼児教育・保育の現場では、マネジメント分野の外部研修等で「子ども主体の保育を支えるため、保育者の主体性も高めること(共主体)を念頭に置いた会議や園内研修の進め方など」を学び、自園に持ち帰ろうとするミドルリーダー層が増えています。しかし、従来のトップダウン型の考え方のトップリーダーや組織体制のままの園では、「現場が勝手にいろいろ考えて動かれると、トップダウン型の組織の秩序が乱れてしまう」といった理由で、せっかく学んできた新しい方法を実践させてもらえないケースがあるそうです。「子ども主体の保育」を実現するためには、単にトップからの指示を守るだけの「管理・監督」役から脱却し、現場の声を取り入れて実践に反映する柔軟なマネジメントがミドルリーダーには求められているのですが…。トップリーダーの考え方や組織体制が変わっていないため、園の実情と外部研修で学んできたこととの間でジレンマや葛藤を抱えることになってしまいます。
◆発表②:現状の課題と悩み、目指す姿(認定こども園安井幼稚園 栫井 裕矢 先生)
安井幼稚園は、昭和28年(1953年)に創立され、71周年を迎える歴史ある幼稚園です。兵庫県西宮市にあり、令和4年度(2022年)に幼稚園型認定こども園へと移行しました。令和8年度(2026年)には幼保連携型認定こども園に移行予定で、現在少しずつ環境や組織・保育が変化している段階です。
◎現状の課題:理念の共有不足と組織体制の固定化
栫井先生は、安井幼稚園の現状について、「園として目指すべき先(理念)が職員全体に共有されていない」ことを大きな課題と捉えています。具体的には、毎年のカリキュラム(指導計画)に沿って保育が進められる中で、「今年の子どもたちにはどんな保育内容が合うだろうか。またそれをどう進めていくのが良いか。」と現場が考えるのではなく、「この時期は例年これをやっているから」という理由で、「やるべき保育内容」が既に決まっているのが実情です。そのため、各学年・クラスで行われる保育内容はほぼ同じになり、毎年同じことを繰り返しているような状況(盲目的な前年度踏襲)が続いています。
また、月に一度のカリキュラム見直し会議も形式化しがちで、学年を超えた話し合いや意見交換の場が少なく、心理的安全性も十分に確保されていないため、若手職員は意見を控え、ベテラン層も「見て学べ」という姿勢に留まり、相互理解が進んでいません。このような環境では、職員が仕事に意義やモチベーションを見出しにくく、職員の主体性が損なわれて自主性へ片寄ってしまうリスクが高まっています。
◎栫井先生が目指す園の姿:柔軟で主体性を尊重する環境づくり
栫井先生が目指すのは、「子どもの主体性」と「保育者の主体性」を共に重視する「共主体の園づくり」であり、それ以前に「今の子ども」を見て考え、話し合える職場環境です。まず、トップリーダーと現場をつなぐミドルリーダーが、保育方針や理念をしっかりと理解し、またそれが園全体にも浸透し、職員全体が共通の目標に向かって歩める体制を構築したいと考えています。そのためには、現場の職員が意見を自由に発信し、保育方針や目指すべき理念について本音で語り合える関係性が必要だと考えています。
また、栫井先生は、職員が保育のやりがいと責任の両方を感じられる体制づくりが必要であると考えています。現在はトップリーダー層が「自分たちの決めること」という姿勢を取っているため、現場の先生たちも「上がやってくれるから」と「任せっきり」になりがちで、保育に対するやりがいや責任感を感じにくい状況です。栫井先生は、こうした状況を改善し、現場の保育者が主体的に各々の役割を果たし、自分の保育に意義を見出しながら仕事に取り組める体制を目指しています。職員の個性を発揮できる環境こそが、園全体の質の向上につながると述べました。
◆ディスカッション① 理念の浸透と現場での実践
◎理念を共有するための土壌づくり
亀山先生は、自身の経験から、理念の浸透に関する課題と向き合ってきた過程を語りました。特に、「目指すべき姿(理念)」を職員全体に共有し、納得して行動に移してもらうには、時間と多くの努力が必要であると述べています。「子どもの姿」については比較的話しやすい一方で、「組織の姿」については職員が無自覚なことが多く、意識を高めるのには時間がかかると指摘しました。
また、職員が抵抗を感じる場合もあるため、園内の研修や外部講師の支援を活用し、職員が「組織の姿」を自覚できるように働きかけてきたと説明しました。こうした「話し合える土壌づくり」はどの園でも難しい課題であり、業務負担を軽減して時間を確保するなどの工夫が不可欠です。さらに、話し合いが深まるためには、理念や目標をしっかりと見直し、それに照らし合わせた行動を取る姿勢が重要であると述べました。
◎独自の「色」を塗る重要性
阿部先生も、幼稚園教育要領や保育所保育指針、認定こども園教育・保育要領に描かれている子どもの姿を「塗り絵の枠」に例え、私立幼稚園では園ごとに独自の「色」を塗ることが大切であると述べました。これに対して亀山先生は、その「色塗り」が園の特色を表現するものであり、塗り方、塗る順番、濃さは各園・組織ごとで全部異なるはずで、「なぜそう塗っているのですか?」という理由は「理念に基づくもの」であり、もし理念が明確でなければ、理念を作る中で、その塗り方を編み出していくことが必要であると指摘しました。
◎理念の曖昧さと現場の混乱
栫井先生は、この点について自身の園での課題を共有しました。現理事長・園長は、先代が作り上げてきた色塗りを大切にしつつも、塗って行く過程で、理念の根底である「大事に思っていること」が職員に十分に共有されていないため、現場での色塗りが曖昧になっていると述べました。さらに、何を目指すかというところがハッキリしないまま進んできたので、過去に独自に塗られてきた色が強く残っており、本来求めていた「色塗り」からずれてきていることにも悩んでいると説明しました。
◎現場との共創で理念を育む
阿部先生はこれを受け、「理念がトップダウンで押し付けられるのではなく、現場の先生たちと共に築き上げることが重要ではないか」と問いかけました。亀山先生もこの意見に賛同し、現場の職員が自ら考え、子どもたちの保育についても自然と考えられる「話し合いの土壌」を作ることの重要性を強調しました。一方で、トップが現場と共に議論せず一方的に決定を下してしまうと、職員の意欲が失われ「やらされている感」が漂ってしまうリスクがあると指摘しました。
◎理念の浸透と共感を支える環境の必要性
このディスカッションを通して、理念の浸透にはトップリーダーが現場の声に耳を傾け、職員が自分の保育に意義とやりがいを見出せるような環境を作ることが重要であると再確認されました。
◆発表③:リーダーシップとマネジメントの違い、そしてミドルリーダーに求められる役割(庄内こどもの杜幼稚園 北島 孝通 先生)
◎リーダーとマネージャーの役割の違い
北島先生は、栫井先生が現場で果たすべき役割を説明するにあたり、まず「リーダー」と「マネージャー」の違いに触れました。リーダー(上司や代表)は目標を設定し、進むべき方向を決断し示す役割を担います。一方でマネージャーは、与えられた目標に向かって「人」「物」「こと」を効果的に使い、計画を達成する責任が求められます。栫井先生の立場は、マネージャーとして現場とトップをつなぐ「中間管理職」にあたり、目標達成に向けた現場での実行責任が重要だと指摘しました。
◎理念の策定におけるファシリテーション
理念策定に関して北島先生は、栫井先生が次期トップ候補であるからこそ、現在の園長や理事長の考えを「言語化」する重要性を強調しました。例として、先代の考えを後継者が引き出し、従業員に分かるように文字化した「聖護院八ッ橋総本店」のケースを挙げ、栫井先生もファシリテーション能力を駆使しながら、園長や理事長の考えに共感しつつ、その理念を現場に落とし込むために「言語化」することが必要だとアドバイスしました。このプロセスは外部の人では難しいため、栫井先生自身が自らの理解を深めながら進めるべきとしています。
◎ミドルリーダーの役割「つなげる」
北島先生は、ミドルリーダーの役割を「つなげること」とし、上司と部下、年長・年中・年少などの他部門との横の連携、さらに外部の関係者・団体との連携が求められると述べました。トップと現場の間で情報を共有し、必要に応じて現場の状況をトップに伝え、トップに決断を促し、その決定を現場に反映する役割が期待されると指摘しました。また、トップに理念を「語ってもらう」ために、場合によってはゴーストライティングもして援助することも一つです。ミドルリーダーから現場に言いにくいことを、代わりにトップに伝えてもらう調整役としての役割も強調されました。
◎会議における決定権の明確化とファシリテーションの重要性
北島先生は、組織内で「誰が決定権を持つか」を明確にする重要性を述べ、これは曖昧にしてはならないと強調しました。例えば、北島先生の園では消耗品の購入についても、金額の範囲内であれば現場が決定権を持つ立場が明示されており、その決定に関して相談や報告の必要がないというルールがある、といった具体例を挙げました。会議の出席者にも「決定権者」「有力者」「発言者」「聞くだけの人」などの立ち位置・役割があり、議論が効果的に進むよう、あらかじめどんな立場の参加者が出席するかを意識することが推奨されました。
また、決定権者や有力者が会議に不在の場合は代理決定も事前に決めておくことが必要で、決定権者が不在でも対応可能な範囲を定めることが会議の効率化に繋がるとしています。さらに、有力者の意見や発言が決定に影響を与えるため、会議の前に事前調整やネゴシエーションを行い、「有力者」と進め方の理解を得ておくことが、会議を進行するミドルリーダーとしての重要な準備だと述べました。
◎準備が8割、会議を成功させるための工夫
北島先生は、会議の成功には「準備が8割」との認識を示し、特に決定権者や有力者との事前ネゴシエーションが会議の質を高めるとまとめました。事前調整がなければ、会議での現場の意見が「決定者」や「有力者」の力で覆されるリスクがあり、参加者の労力を無駄にすることにもなるため、十分な準備が求められると締めくくりました。
◆ディスカッション② 現場の主体性とトップの歩み寄りの必要性
◎阿部先生の事例紹介
阿部先生は、「昔ながらの保育者主導型の保育を続けてきた園で、新しく就任したトップが『子ども主体の保育』への転換を目指したが、現場の若い先生たちが困惑しているケース」という最近の事例を紹介しました。新園長がECERS(エカーズ)という北米で生まれた保育環境の評価スケールを導入し、先生たちと園内の環境を見直して、園長のセレクトした玩具や道具を買い与えました。若い先生たちは「新しい道具を使ってどのような環境を作り、どう玩具を使えばいいのか」と、いろいろ試行錯誤を始めました。そして、新しいチャレンジへの評価を受けたり、迷っていることの相談をしたりしようと、新園長のもとへ「これでいいでしょうか?」などと尋ねにいきました。けれども、そこで新園長から返ってきたのは「う〜ん、まだなんか違和感があるなぁ」という言葉だけでした。
先生たちからすれば、この言葉だけでは途方に暮れてしまいます。当然、「どこがですか?どうすればいいですか?」などとさらに詳細を尋ねます。しかし、新園長には「先生たちの主体性を大事にしたいので、自分で考えて欲しい」という思いがあったため、「そこは自分で考えてみてよ」と言いました。新園長が良かれと思って放った言葉は、しかし先生たちにしてみれば、まるで突き放されたような気持ちになる言葉でした…。阿部先生はこのような事例を参加者に共有し、「トップと現場の間にミドルリーダーがいないことで、お互いの思いを仲介してくれる存在がおらず、また園の新しい方針に沿った丁寧な指導や詳細な指示も足りておらず、様々なギャップが生じている」という話題を提供しました。
◎西尾氏と藤田氏の見解
西尾氏は、自身も「任せる」と言いながら、実際には放任・放置になってしまうことがあると共感を示しました。トップの意図と現場の受け止め方に食い違いが生じる場面は多く、ミドルリーダーの役割が重要になるとしています。藤田氏も、トップとミドルリーダー、現場では「見ている時間軸や視点が異なる」と指摘し、そのすれ違いが現場の悩みを生む要因だと述べました。藤田氏の視点からも、現場が主体的に考え、学ぶことは重要ですが、それには適切なサポートと明確な方向性が必要であるとしています。
◎阿部先生の山登りのメタファー
阿部先生は、トップと現場の関係性を「山登り」に例えました。トップは山の頂から遠くの景色まで見渡すことができます。一方で、現場の先生たちは山の麓にいるため、見える景色は目の前の山肌や植物などが主になります。このように、同じ組織の中にいても見えている景色が異なるため、話の噛み合わないことが発生するのだと指摘しました。そのため、ミドルがトップと現場の間で通訳をしたり、トップが現場に少し歩み寄って「自分の目線」を現場に合わせたりすることが大切だと説明しました。また、トップが現場の具体的な状況に合わせてアクションを示すことで、組織全体の円滑な進行が図れると述べました。亀山先生は「トップがどうやって現場に歩み寄るか」を阿部先生に質問しました。阿部先生は「トップが現場に歩み寄る必要性を感じられるかが重要」であり、現場の状況や悩みに共感し、必要に応じてトップ自らが行動を示すことが大切だと回答しました。
◎西尾氏の問いかけ
西尾氏は、栫井先生のようなミドルリーダーには「リーダーの意図を汲み取る力」「現場の声を拾う力」「ファシリテーション能力」など、さまざまなスキルが求められるが、具体的にはどの能力が最も重要かについて考えるよう参加者に問いかけました。
◎栫井先生の視点
栫井先生は、自身の役割について「上層部の意図を理解しつつも、現場と共に組織を向上させる姿勢」が必要と考えていると述べました。また、自身が後継者であり、家族という立場もありながら、現場の信頼を得つつ、より良い環境を作りたいという責任感があると語りました。
◎阿部先生の全体最適の考え方
最後に阿部先生は、「全体最適」という考え方を紹介しました。これは、組織全体を意識した上で、個々の役割を果たすというアプローチであり、保育現場でも個々が自己管理をしつつ、全体を意識して働くことが重要だと述べました。また、ミドルリーダーが欠けている園では、トップが現場に歩み寄るか、現場が上層部に歩み寄るといった調整が必要であり、お互いに全体最適を意識した発信が重要だと強調しました。
◆ディスカッション③ トップと現場の「ズレ」の確認とミドルリーダーの役割強化
◎北島先生:「ズレ」を確認し、上から歩み寄る姿勢の重要性
北島先生は「ズレ」を確認することの重要性を強調しました。園長の「なんとなく違和感がある」という曖昧なフィードバックが現場にとっての指針になり得ない中、双方のすれ違いや誤解はそのままにせず、丁寧に確認することが肝心であると述べています。こうした確認作業は非常にストレスがかかるものの、トップが自ら歩み寄って、現場の具体的な疑問や不安を解消していくことが必要です。北島先生は、日本代表の森保監督と守田選手の例を挙げ、上の立場から率先して直接現場と「ズレ」を確認するリーダーシップが必要だと示唆しました。リーダーが「どこに違和感を感じたのか」「具体的にどこを改善すべきか」と現場に尋ね、心理的安全性を確保しながら対話することで、現場からの意見が引き出され、現場が安心して議論できる関係が築かれると述べました。
◎栫井先生への助言:ミドルリーダーとしての役割と「つなぎ」の必要性
阿部先生と北島先生は、上に対しても、下に対しても、栫井先生自身がいろいろなことを問いかけて行く。そこで出てきた話を言語化してあげて、またトップリーダーと現場の両方に伝えて、両者をつなげる「キーマン」としての役割を果たすべきだと助言しました。トップからの曖昧な指示に対しては「どこが違和感なのか」「どの点を重視すべきか」といった具体的な確認を繰り返すことで、トップの意図を言語化してあげる。現場の意見を受けてトップと調整し、譲歩をお願いするなど、ミドルリーダーとして、ズレを埋め合わせることで、双方の信頼関係を構築することができると述べました。
◎How-toの実践策:外部リソースの活用と他園の事例共有
亀山先生は具体策として、以下のポイントを提案しました:
- 外部リソースの活用:外部講師や理事、評議員など、外部の視点を活用して、無意識に持っているズレをトップに気づかせる機会を作ること。
- 他園の成功事例の共有:「他の園ではこうした取り組みがされています」と日常的に情報を伝えることで、トップの関心を引き、現場の取り組みのモチベーションを高める。
- 組織変革時の情報共有と相談:組織変革を進める際にミドルリーダーが中心となり、現場の声を集めてトップに伝えることで、方向性のズレを抑制する。
- 役割分担の明確化:「トップが言ったことややろうとしていることが理解されない」場合、ミドルリーダーがその意図を噛み砕いて、現場とトップ間の伝達を担う。また、必要に応じて会議での確認や意見交換の場を設ける。
最後に亀山先生は、ミドルリーダーが率先して、トップの発言や指示を再度確認し、現場がより具体的に理解できるようにすることの重要性を語りました。難しい指示やズレを埋めるために、現代の若い職員にとってわかりやすい形にアレンジし、互いの理解が深まるような体制を目指すべきだと締めくくりました。
◆総括
◎阿部先生:現場とトップが共に築く「子ども主体の保育」
阿部先生は今回のディスカッションを振り返り、特に「子ども主体の保育」を実現するためには、現場の先生方とトップリーダーが一体となって議論し、価値観を共有していくことが不可欠であると総括しました。いまの幼保業界には、従来のトップダウン型の組織図が依然として残っているため、現場の先生たちが会議や研修で発言を遠慮してしまう傾向があると指摘し、その改善が課題であると述べました。
また、阿部先生は、ミドルリーダーや園長が「現場とともに考える姿勢」を示し、「どのように困っているか」「何をしたいのか」などを具体的に共有し、相互に寄り添っていく姿勢が大切であると強調しました。現場の先生たちが意見を出しやすい環境を整えることが、安井幼稚園にとって今後の大きなステップになると述べました。
◎栫井先生:「現場とトップをつなぐ存在」としての決意
栫井先生は、今回の議論を通して改めて「現場とトップの橋渡し役」としての自身の役割を再確認しました。多くの意見が交わされる中で、現場の先生たちが「話し合うことの大切さ」に気付き、意見を共有できるような機会の重要性を強く感じたと述べました。特に、運動会などの行事を通じて、日常の保育や活動に対する共感と価値観のすり合わせが可能であると実感し、こうした場をうまく活用していきたいとの意向を示しました。
また、栫井先生は、トップが掲げる理念を現場に自然に伝え、共に実践できる環境を整えるために、ミドルリーダーとしての役割を自覚しながら、現場の声をトップに届けることの大切さを改めて確認しました。現場との対話を重ねつつ、トップの意図をしっかりと下ろし、安井幼稚園の理想の保育環境を築くために、地道な努力を続けていく決意を新たにしました。
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◆執筆者・西尾のまとめ
「働き方改革や業務効率化で定着率アップってホンマなん?!」というテーマでスタートしたこのオンラインイベントも、Vol.1、Vol.2を経て、当初の「なぜ教職員が定着しないのか?」という疑問から始まり、働き方改革や業務効率化のHow-toではなく、理念やトップマネジメントの重要性にまで話が広がり、幼児教育・保育の現場ならではの課題と向き合う機会となっています。
今回はトップと現場の板挟みになりがちなミドルリーダーに焦点を当て、栫井先生のリアルな悩みを基点に、亀山先生、阿部先生、北島先生からの貴重なアドバイスを交えたディスカッションが展開されました。充実した90分間の中で、参加者の皆さんからも「職員の主体性を引き出す育成が課題である」「自園の状況を振り返る良い機会になった」「理念を現場に浸透させる難しさを改めて実感した」などの声が寄せられ、それぞれの立場から気づきが交わされ、視点を広げる機会となったと思います。
私自身、イベントの最後にもお話させていただきましたが、こうした場で一時的に気づきを得ても、現場に戻れば新たな葛藤が始まるのが現実です。トップもミドルも、それぞれの立場で日々悩み続けています。だからこそ、全国の先生方と「本音で悩む場」を作りたいという想いでこのコミュニティを立ち上げました。
すぐに成果が見えなくても構いません。同じように試行錯誤を重ねる園がたくさんあります。だからこそ「次回もまた参加してみよう」「ちょっと話してみよう」と気軽に集まり、悩みやアイデアをシェアする場であり続けたいと願っています。ここはセミナーでもなく、一方的に何かを提供する場でもありません。みんなで悩み、考え、ともに前に進んでいける場です。阿部先生が立ち上げ時にお話しくださった「みんなで悩む場」というコンセプトを胸に、次回もぜひ、このコミュニティでお会いできることを楽しみにしています。
◆次回オンラインイベントは11月20日(水)開催決定!
本コミュニティ「働き方改革や業務効率化で定着率アップってホンマなん?!」は、2024年度内に全3~4回の開催を予定しています。次回は2024年11月20日(水)17時00分からの開催です。
詳細はこちら:https://blog.buscatch.com/2024/11/01/15166
【無料オンラインイベント】ホンマなんコミュニティVol.4「ミドルと一緒に作る 園内の仕組みと仕かけ」開催のお知らせ
次回のテーマは「園内の仕組みづくり」。ゲストとして東聖こばと幼稚園の向平雄馬先生をお迎えし、現場での試行錯誤の体験を共有していただきます。教育・保育現場での情報共有を可視化・継続し、組織運営を効率化するための新たなアプローチやリーダーシップの発揮について、参加者の皆さんと共に具体的な解決策を探ります。
ミドルリーダーとしての課題に共感し、解決策を模索している方にとって、このイベントは絶好のチャンスです。全国の先生方とともに学び合い、支え合う場でありたいと願っています。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
参加申し込みはこちら:https://buscatch.net/mobile/vish-webinar/mailmaga/entry/33
■主催会社/VISH株式会社について
VISH株式会社は、日本の真ん中・愛知県名古屋市からインターネットを活用し、皆さまの想い(Vision)を共有(Share)するクラウドサービスの開発・提供を行っています。2010年にリリースした「園支援システム+バスキャッチ」は、園バス運行情報、園児管理を中心に、保護者の連絡手段のデジタル化、教職員の働き方改革に寄与する低価格なクラウドサービスで、2024年4月1日時点で、全国約2,500の施設で利用されています(解約・閉園除く)。
VISH株式会社 https://www.vish.co.jp/
「園支援システム+バスキャッチ」 https://www.buscatch.com/kindergarten/
■主催会社/リンクエイジ株式会社について
リンクエイジ株式会社は、インターネット写真サービス「memoridge」を運営しています。教育機関を中心にスポーツ団体や、さまざまなイベントの写真や動画撮影、インターネット上での販売を行うサービスです。現在は延べ全国1,700団体以上の導入実績があります。2021年10月には新サービス「memoridge drive(メモリッジドライブ)」を開始いたしました。「全ての愛を力に変える」をミッションに写真1枚から、愛情を増幅させ、世の中に変わらない愛の循環を生んでいきたい。そして、その愛はきっと明日を生きる力に変わる。そんな愛ある会社を目指しております。
リンクエイジ株式会社 https://www.lage.co.jp/
メモリッジ(事例多数記載) https://memoridge.lage.co.jp/
メモリッジドライブ(先生向け写真管理システム) https://drive.memoridge.com/lp
memoridgeAD(園児募集特化型WEB広告) https://www.lage.co.jp/service/ad/
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